矯正治療においては、マニュアル通りに装置を作製し、マニュアル通りに装置を装着すれば、目的通り歯は動く。これは昔も今も変わらない。
しかしながら、加えられた力に生体がどのように反応し、歯が動くのか、つまり顎顔面頭蓋のバイオメカニクスを正しく理解しておくことは、多様な適ニックをマスターし、自在に駆使するための基本的な要件でもある。
本書はそれら多様なテクニックの生物学的背景である顎顔面頭蓋のメカニクスを解剖学的、かつ精緻なイラストで図説したカラーアトラスである。
著者は、30数年前の訳書である「バイオプログレッシブの治療法」の例をみるまでもなく、顎顔面頭蓋のバイオメカニクスについての造詣は深く、本書ほど顎顔面頭蓋と矯正治療は言うにおよばず、全身の健康との関係をも視野に入れたアトラスは他に例を見ない。
前者の「エッジワイズ法入門」に続く、著者の歯科矯正顎の集大成である。