歯科矯正用アンカースクリューの出現で、矯正治療は大きく変わり、以前では不可能であった治療ができるようになった。しかし、スクリューの普及とともに、脱落、感染・膨張、歯根接触、一方向からの牽引しかできないなど、いくつかの問題点、課題がクローズアップされてきた。
これらの課題に真正面から取り組んだ著者は、数年にわたる試行錯誤と試作品の改善を積み重ね、全く新しいコンセプトのもとに矯正用アンカレッジシステムi-stationを誕生させた。
本書の第一部「i-stationの開発背景とコンセプト」では、著者が以前に手がけた症例をもとに、既存のアンカースクリューによる治療上の課題を明らかにするとともに、その反省から生まれたi-stationのコンセプト、構成部材、埋入方法、装置の作製手順が詳細に紹介されている。
また、第二部の「i-stationのメカニクスと臨床」では、精密な術式を用いることなく、あらゆる歯の移動に、同時進行で対応できるi-stationの数々の特徴を、実際の症例を通じて詳説されている。
本書により、i-stationの開発に至る経緯、中でも、新しいメカニクスについての発想を著者と共有することにより、システムの理解が一層深まり、的確な装置の作製と臨床応用が容易に身につくことは、開発者自らが著した本書ならではの特徴でもある。