マイクロスコープのようにすばらしい医療効果をもたらす道具には今まで出会ったことがありません。これほどの可能性を秘めたマイクロスコープなのに、その普及率は、20年も経った今も、わずか6%という低い数値に留まっていることは理解できません。
その背景には、長年の経験や勘などという、あまり科学的とはいえないアプローチや、昔ながらの伝統的な治療を繰り返す歯科界の体質もあるのではないかと思います。
同様に、マイクロスコープも器用な先生や勘の良い先生だけが使いこなしていて、体系づけられたテキストブックが存在しないために、ごく普通の先生がマイクロスコープのさまざまなメリットを十分に亨受できていないのではないかという思いがずっと続いていました。
たまたま一昨年から昨年にかけて月刊「小児歯科臨床」に「顕微鏡歯科への誘い」というシリーズタイトルで執筆する機会があり、その少なからぬ反響に驚きました。その多くは、マイクロスコープを導入したいが、その有効性、適用範囲、操作技術の修得などに関するものでした。それがきっかけとなり、今回、一連の連載を再構成、加筆修正してひとつの読み物としてまとめてみました。
この冊子が、それからマイクロスコープを導入しようとする先生方にとって少しでもお役に立てば幸いです。
本書「はじめに」により抜粋・要約