患者からの要請も高く、現在の矯正歯科治療の最大の課題ともいうべきテーマに“治療期間の短縮化”がある。この問題を解決すべく、従来は主としてNiTiワイヤーやSLブラケットなど材料や装置の開発に依拠してきた。
しかし、近年、この歯の移動に生物学的手法を活用して治療を加速しようとする気運が以前にも増して高まってきた。この骨改造現象を積極的に利用して治療機関の短縮を図るのが「加速矯正」である。
AJO(アメリカ矯正歯科学会雑誌)誌のアンケート調査では、回答した矯正歯科医の7割は加速矯正に関心を示し、治療期間が「20~40%短縮できる方法があれば魅力的」と答えている。また、JCO誌の読者アンケートでは、回答者の半数近くはすでに何らかの加速矯正治療を行っていると答えている。
日本でも加速矯正への関心はもとより、すでに補助的な手法として取り入れる矯正歯科医が増えつつある。
本書は、日本における現在までの主な加速矯正、すなわち、修復機転、サイトカイン、超音波、光・レーザー(振動)、デジタルを利用した手法の理論的背景、臨床応用例を網羅した初の成書である。