「咀嚼器官に降りつもるのは静かな時間だけとはかぎらない……」。著者独特の語り口で、壮大な物語は始まります。変化する生体と過剰な「力」の問題は機械論だけでは解決できないことを知った著者は、マクロの視野とミクロの手技をもって、天然歯と修復物に起こる現象をつぶさに観察し、対応を追求してきました。その原点は、1992年から2年間にわたった『補綴臨床』の連載に遡ります。それから20年余、一貫して妥協を許さない著者がたどり着いたのは、オーバーロードへの対応でした。
インプラントと天然歯が混在するとき、オーバーロードが引き起こす変化にどのように眼を向けるのかを、著者はこの本で問いかけています。同時に、精緻な修復の技術論にも鋭くメスを入れています。
常に臨床的な視点を大事にする著者による本書は、インプラントの扉を開けた時代の補綴の道しるべとして必読の書となるでしょう。
【主な目次】
序 まず症例から
1章 「科学」の共有
2章 咬合概論
3章 修復各論
4章 審美修復
5章 歯冠形成
6章 歯肉圧排
7章 印象採得
8章 修復物の適合性
9章 歯冠外形
10章 咬合の最終局面