「歯は、目で見て、自分で治して、そうして、効果がわかる。」
石原は自分に言い聞かせるように訥々と、歯科医師への転身の理由をそう語った。そして、臨床を真正面に据えながら、教育者として、学者として、清明な論理をもって実証にこだわり続けた。歯科は、ここに初めて「ものがたり」を得た。これはノンフィクションであり、証言集であり、歯科医学の現代史である。石原寿郎という臨床を愛した孤高の学者の仕事と彼をめぐる状況を、歴史的資料によって跡づけ、丁寧に紡いだ。
【目次】
一.転向
二.粉砕学
三.ギージーの嘘、
四.鋳造冠
五.銅合金
六.中心感染
七.ゆきづまり
八.ナソロジー
九.下顎運動
十.運動軸
十一.渡欧
十二.種々相
十三.熱病
十四.責任